何が変わったか——2026年5月施行の改正薬機法の骨子
What Changed: Key Points of the Amended Pharmaceutical Affairs Law改正薬機法 主な変更点(2026年5月1日施行)
対象成分 6→8に拡大
デキストロメトルファン・ジフェンヒドラミンを追加
「努力義務」→「法的義務」へ格上げ
違反時は業務停止命令等の罰則が適用される
対面・テレビ電話販売の義務化
セルフレジ・無人販売は禁止。EC購入もビデオ通話必須
改正薬機法は2025年5月21日公布(法律第37号)、2025年11月20日の一部施行を経て、2026年5月1日に主要規定が全面施行された。
最大の変更点は2つ:
①指定濫用防止医薬品の対象成分拡大(6→8成分):従来の6成分(エフェドリン・コデイン・ジヒドロコデイン・ブロムワレリル尿素・プソイドエフェドリン・メチルエフェドリン)に、デキストロメトルファン(咳止め薬に多含有)とジフェンヒドラミン(睡眠改善薬等)が追加された。
②規制の法的根拠の強化:従来は省令通知ベースの「努力義務」だったが、改正薬機法本体に規定が移り、違反時は罰則(業務停止命令等)が適用される法的義務となった。
8成分の対象製品——ドラッグストアの棚への影響
8-Ingredient Products: Impact on Drugstore Shelves指定濫用防止医薬品 8成分(★は2026年5月追加)
エフェドリン
鼻炎薬・総合感冒薬
コデイン
咳止め・総合感冒薬
ジヒドロコデイン
咳止め薬
ブロムワレリル尿素
鎮静・睡眠補助
プソイドエフェドリン
鼻炎薬・充血除去薬
メチルエフェドリン
気管支拡張薬・喘息薬
デキストロメトルファン ★新
咳止め薬(ブロン等)
ジフェンヒドラミン ★新
睡眠改善薬(ドリエル等)
8成分に該当する代表的なOTC医薬品:
:「メジコン(武田薬品)」「ブロン(興和)」「新コルゲンコーワ咳止め」など市販の咳止め薬の多くが該当。特に「夜間・就寝前の長時間咳止め」製品に多い。
:「ドリエル(エスエス製薬)」「レスタミン」など睡眠改善薬・一部抗ヒスタミン薬が該当。
小売側の対応義務: ①購入者への確認と情報提供(使用目的・状況の確認) ②18歳未満への1箱超販売の禁止(法的義務化) ③セルフレジ・無人レジでの販売禁止(対面確認必須)
登録販売者に求められる「対面・テレビ電話販売」
In-Person or Video Sales Requirements for Registered Sales Representatives改正後の販売方法 — 旧・新比較
改正前(〜2026/4/30)
✓ セルフレジ販売可(努力義務のみ)
✓ EC無人購入可
✓ 記録保存は任意
改正後(2026/5/1〜)
✗ セルフレジ販売禁止
✗ EC無人購入禁止(ビデオ通話必須)
✓ 購入者確認・記録保存が義務
改正法で実務上の影響が最大なのが販売方法の限定だ。
指定濫用防止医薬品の販売は、薬剤師または登録販売者が直接対面または映像・音声による通話(テレビ電話等)で購入者と接触した上で実施することが義務付けられた。
セルフレジ・無人レジでの販売禁止:対面確認なしのセルフレジ販売は施行後は違法となる。コンビニの深夜・ワンオペ時間帯での対応が特に課題。
インターネット通販への影響:テレビ電話等を通じた薬剤師・登録販売者との対話なしのEC販売は禁止。大手ドラッグストアECは購入フローにビデオ通話機能の実装が必要となった。
登録販売者の負荷増加:確認義務の手順が増えることで、接客時間が延びる。特に来客数の多い時間帯のオペレーション設計が求められる。
違反リスクと行政対応の実態
Compliance Risk and Administrative Response違反リスクと行政対応の変化
改正前
省令通知ベースの努力義務。重大ケース以外は「指導・勧告」が中心
改正後
薬機法本体に明記。都道府県が直接「改善命令・業務停止命令」を発動できる根拠が明確化
初動は段階的指導が中心だが「知らなかった」では通用しない法的根拠が整備された
「努力義務から法的義務へ」の格上げで、違反時のリスクはどう変わったか。
行政処分の根拠明確化:改正前は「指導・勧告」が中心だったが、改正後は薬機法違反として都道府県の薬務担当が直接立入検査・改善命令・業務停止命令を発動できる根拠が明確になった。
現実の運用:施行直後に全国一斉で厳格なペナルティを適用するというよりも、「指導・改善要求を中心とした段階的アプローチ」が現実的と見られている。しかし「知らなかった」では通用しない法的根拠が整備されたことは重要。
業界の反応:日本チェーンドラッグストア協会・日本コンビニエンスストア協会とも、会員企業への周知・研修資料の作成を急いでいる。
The Brief視点——「製品の見た目は変わらない」のに「売り方」が変わる難しさ
The Brief's Take: Products Look the Same But Selling Methods Change Fundamentally事業者別 今すぐ対応すべきアクション
POSシステム・棚割り反映、スタッフ研修、対面確認オペレーション設計
深夜・ワンオペ時の対応フロー設計(販売時間帯の限定も選択肢)
ビデオ通話フローの実装コスト試算→対応か取り扱い停止かを早急に判断
消費者への変更告知コミュニケーション(「面倒になった」印象の最小化)
今回の改正で最も実務上の難しさを生み出しているのは、「製品自体は棚に並んでいるが、売り方の義務が変わった」という変化の性質だ。消費者の購買習慣は変わらないのに、販売側の対応フローが増える。
The Brief視点: ①ドラッグストア・コンビニは「対面確認のオペレーション設計」を急ぐべき:POSシステムや棚割りへの反映、スタッフ研修が急務。 ②ECサイトはビデオ通話フロー実装のコストを今すぐ試算すべき:大手は対応中だが、中小ECには対応コストが重くのしかかる。 ③消費者への丁寧な告知:「今まで普通に買えた薬がいきなり面倒になった」という印象を最小化するコミュニケーションが重要。
長期的には、濫用防止医薬品の管理義務強化は「OTC医薬品の安全性への信頼」を守るための投資として捉えるべきだ。コンプライアンスコストを惜しんで規制対応を後回しにした場合、行政処分・メディア報道による信頼失墜のコストの方が遥かに大きい。
sources: 厚生労働省 / 薬事日報 / 登販ナビ / データインデックス